大学入試問題と解答、出題意図の公表が望ましい
昨年の大阪大や京都大で大学入試問題に出題ミスがあったことが、最近になって相次いで発覚しました。今年はそんなことのないようにきちんと入試問題を作ってもらいたいものです。
入試問題の正解や解答例を公表すれば問題のミスが早く見つかる面もあるため、文部科学省は入試問題解答の開示について検討する考えのようです。しかし、各大学ごとに方針はバラバラで、公表による弊害を懸念する声もあります。
正解や模範解答例の開示について、文部科学省は各大学に「標準的な解答例や出題の意図を明らかにするよう努める」と通知しているそうです。国立大学協会も「受験生の便宜のためにも望ましい」との指針を示しています。
受験生にとっても、正解や模範解答例があれば、自分のどこが間違っていたかわかり、対策を立てるのに有益な情報になるでしょう。私も正解を公表すべきと思います。
しかしながら、必ずしも大学全てが同じ考えでは無いようです。
朝日新聞が全国の29大学に対応を尋ねたところ、13大学が公表または一部公表、16大学が非公表と回答したそうです。つまり、半数以上の大学が解答の公表をしない、という方針です。
例えば、関西大学では「問題を理解してもらう」ため、高校や予備校に問題と解答例を入れたCD―ROMを渡しているそうです。解答だけでなく、問題もセットで完全に公開するのは受験生にとって非常にありがたい気がします。しかも、受験生全員に一律に配布する姿勢は大学の責任を果たしているともいえるでしょう。
一方で、受験生の申し出に応じて開示する名古屋大は「社会への説明責任を果たすため」とし、「正解を示しにくい問題は出題の意図を開示している」と説明しています。これは解答が欲しくない受験生もいるので、要求されたら解答を示すのであれば、実質公開と同じですから、このやり方もよいと思われます。
関西学院大は「大学の責務」として、解答例や部分点の有無、正答率、高校生に期待する学習内容をまとめた「入試問題集」を30年前から作成。「高校の教員の研究、受験生の学習の一助に」と配っているそうです。解答例だけでなく、正答率や高校生への期待する内容までまとめてくれると対策しやすく、受験を検討している高校生にとっては有益な資料になると思われます。
その一方で、公表していない大学も多くあります。
その理由としては、正解が一つとは限らない記述式などについて「解答例を示すとかえって混乱を生む」との意見が出ているそうです。しかしながら、採点ができるということは、どの項目を書けば何点とか決まっているはずですから、公表は可能と思われます。
東京大は「解答や解法を暗記する受験対策につながりかねないため、現時点で一般入試の解答例を公表する予定はない」とした上で、「国の動向なども踏まえつつ考えたい」(入試課)といっているそうです。
ある意味、過去問ばかりやってその解法を丸暗記する勉強方法を採る受験生もいるかも知れませんが、そんな受験生は合格できないでしょうから、問題ないようにも思います。むしろ、解答を公開した方が東京大学の教員の求めるレベルが明確になるので望ましい気もしますから是非とも東京大学にも入試問題と解答を公開してもらいたいものです。日本のフラッグシップの大学なのですから。
他にも公開しない理由を公開している大学もあります。広島大は「解答に至る思考の過程を重視する問題では、公表することで解法の多様性・柔軟さが損なわれ、高校教育に悪影響を及ぼす」と指摘しているそうです。
果たして本当にそうでしょうか?数学等ではいくつもの解答の仕方がある場合もあり得ます。別に1つの解法にこだわる必要もないですし、実際採点すれば、他のルートから解を導いた答案もあるはずです。そういう生徒を不正解にした場合に大学教授が責任を取らされるのを恐れているのでは、という危惧もありますね。
早稲田大も「解答を導く過程を評価する設問もあり、一律の公表は適切ではない」と説明しているそうです。これは東京大学でも同じように、解答を導く過程を見て部分点を与えているようですから、どのような解答を書けば評価されるかを公開することは、受験生に取って非常に有益な情報ではないかと思います。やはり公開する方が受験生にとっていいように思えます。
方針変更を考えている大学もあるそうです。福井大は「模範的解答や出題意図の公開・開示について検討を始めている」という。出題意図を把握することは正解する上で非常に重要です。そういう意味でも、出題意図の公表は有益です。そして、採点ミスもよりわかりやすくなり、採点ミスで不合格になる受験生も減るというメリットも考えられます。
法政大学は「入試問題の検証は本来大学が責任を持ち、ミスを根絶すべきもの」としたうえで、「公表は受験生のニーズを踏まえ、検討課題になりうる」との意向を示したそうです。このことから、模範解答や出題意図を公開しない大学は、本心では、採点ミスの責任を取りたくないだけなのではないか?とさえ思えます。入試の公正を期すためにも、全大学が、入試問題、模範解答と出題意図の公開をすべきと考える人が多いのではないでしょうか?
最も、もうすぐ大学入試の傾向自体が変化し、従来型の知識重視から、考える力や創造性の方を重視する傾向になるという話もあります。もしそうとすれば、評価が多方面からの評価になるので、一義的な解答はなくなり、ユニークな答えだから合格にする、というケースも出てくる可能性があります。
そうなれば、解答を公表すると、なぜ、この生徒は合格で、あの生徒は同じような解答をしたのに不合格なんだ?というクレームが来るおそれはあり得るでしょう。そういう入試になれば、問題の解答を公開すると問題になるのかも知れません。
とはいえ、時代は透明性を求める方向に行っているので、できるだけ解答を公開し、入試採点の透明化を図ってもらいたいものです。